ヘッドハンティング?薬局に薬剤師スカウトの電話がきたので実際にスカウトマンに会ってみた

薬剤師のスカウトいわゆる「ヘッドハンティング」ってあると思いますか?調剤薬局で勤務していると、不動産投資の電話を始め、様々な業者から電話を受けると思います。

今回、電話で薬剤師スカウトの話を受け、(胡散臭いのわかっていましたけど)、興味本位で実際にスカウトマンに会ってみた体験談を皆さんに共有できたらと思い記事にしました。

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ヘッドハンティングとは

そもそも、ヘッドハンティングとはなんだろうか。インターネットで『ヘッドハンティング』と検索すると、以下のような説明がある。

ヘッドハンティングとは、経営者、経営幹部、それに準ずるミドル層などの優秀な人材を外部からスカウトし、自社に引き入れることをいう。

ヘッドハンティングは、企業から直接依頼を受けたヘッドハンターによって行われる事が多い。

ヘッドハンティングは、事前に企業から一定の金額を受け取って動くケースと、成果に応じて成果報酬を受け取るケースがある。

日本においては、外資系企業が中心となってヘッドハンティングを行ってきたが、最近では日本企業もヘッドハンティングを活用するケースが出てきている。

引用:転職.jp

 

ヘッドハンティングは突然に

ラブストーリーと同じように、薬剤師のヘッドハンティングはなんの前触れもなくやってきます。

ある日突然、スカウトを名乗る男性から薬局に電話がある

当時、私は都内某調剤薬局で派遣薬剤師として勤務をしていました。

都内といっても町外れの処方箋枚数の少ない薬局で、その店舗での勤務年数はおよそ2年。

いつも通りぐうたら勤務していると、受付の電話が鳴り、相手の方は私を名指ししているようで、医療事務さんは私に電話を渡しました。

 

謎の男性「お忙しいところ失礼いたします。わたくし株式会社◯◯◯◯の◯◯と申します。とある企業様より、能力高いの薬剤師を探しているとの依頼を受けておりまして・・・ヘッドハンティングをしておりまして・・・・(一部省略)、

〇〇薬局でご勤務されている〇〇様が大変スキルが高く評判と伺いまして、突然ながらお電話をさせていただきました。」

 

私心の声(ヘッドハンティング?何それ?スキル高いって?そうなんですよねー(笑)!!!)

 

詐欺まがいの不動産投資の電話は毎度スルーするものの、いつもと違う内容の電話で、しかも人に褒められると、やはり人間調子乗ってしまうものです。(大人になると、人に褒められること激減しますからね)

 

謎の男性「・・・(一部省略)、是非一度、実際にお会いしてお話しさせていただけませんでしょうか?」

 

私の心の声「(うっひょー、スカウトってやつか。薬剤師にもヘッドハンティングってあるんだな。)」

 

いきなりの初めての電話に一瞬浮かれてしまった私ですが・・・。

 

よくよく考えると、なんで私のことを知っているんだ?正社員でも管理薬剤師でもない、ただの派遣薬剤師の私の評判がなぜ広がっているんだ?むしろどこに?そもそもヘッドではない(笑)

 

私の心の声「(怪しいすぎる・・・・・)」

 

「(しかも、直接会うのかい。なんか高額なものを売りつけられたり、不動産投資の話に持ち込まれるのではないだろうか?)」

 

普通の人なら怪しいと思った時点で、やんわりお断りすると思うが、私は外国のスラム街をズンズン徘徊するような何事にも動じない性格で(むしろアホ)、もし都合の悪い話ならキッパリと断ることができる。こちらが損するということはないと思えたので、人生の経験値を上げるために、ここは実際にスカウトマンに会ってみようじゃないか。

もちろん電話で話すより、面と向かって話すほうが、細かい情報も聞きやすいし、相手の懐に入りやすい。交渉だってしやすくなる。当然、スカウト側もそっちの方が好都合だろうが、こちらにとっても、もし条件の良い話なら転職も検討してみても良いかもしれない。

ということで、私の携帯番号を伝え、後日、実際にその謎のスカウトマンに会うことになった。

 

そのスカウトマンはなぜ私を名指しできたのか

ここで疑問。なぜそのスカウトマンは私を知っていたのかということ。

基本、管理薬剤師の氏名に関しては、厚生局のwebサイトから確認することができるのだが、他の勤務薬剤師の氏名を知る方法は、直接現場に乗り込む以外にありません。

個人情報が流出しているという話もあるが、私の場合は、少し気になることがあった。

 

それはスカウトから電話のあった数日前のことで、個人を名乗る方から『勤務する薬剤師の名前を教えて欲しい』という電話があった。

そのときは医療事務の方が真摯にその質問にお答えしたようで、それ以上に個人情報を抜き取られることはなかったのだが、おそらくこの事前の問い合わせが私の名前を入手した手段である可能性は高い。(むしろ名前を入手しただけ)

名前を知られて、特に損害を被るということはないのだが、電話で勤務する薬剤師氏名を聞いてくる集団がいるっていうことを是非知っていただきたいと思う。

 

薬剤師とスカウトマンの接触

電話で待ち合わせ場所と時間を決定した私は、当日の仕事後、自宅の最寄駅のスターバックスコーヒーに向かった。

スカウトマンの戦略『特別感』に注意

場所は、相手のオフィスではなく、基本こちらの都合の良い場所や時間に合わせてくれる。

とりあえずスカウトなんだからそれはもはや当然だと思う。

 

スカウトマンによっては、帝国ホテルクラスの高級ホテルに併設するカフェを待ち合わせ場所にすることもあり、これはスカウト会社の策略の一つとなっている。

高級ホテルのカフェで非日常な雰囲気にして「特別感」を演出する。するとスカウトされる側は初めての雰囲気に飲み込まれて正常な判断ができなくなり、そしてコロって逝ってしまうらしい。

 

ただ、製薬会社や広告代理店開催の医師の討論会などは高級ホテルの会議室を貸し切って行われるほどで、それと比較するとカフェというのは、ちっぽけなものである。

特に私の場合は庶民的おしゃれカフェであるスターバックスコーヒーで待ち合わせなので、もはや特別感なんてものは全く存在しない。(場の雰囲気にやられないで済んだのはありがたいことと前向きに考えることによう・・・。)

 

スカウトマンとのやりとり

仕事終わりに待ち合わせ場所のスタバに行くと、スカウトマンがいた。もちろんこちらは適当な私服。

スカウトマンは180cmほどの長身で、グレー系のしっかりしたスーツに美しくラインを保ったネクタイを身につけている。営業マンにありがちな短髪ツーブロックヘアスタイル。

年齢は20後半から30代前半といったところか。

 

スカウトマンの話を聞いてみると、内容はこうだった。

 

「〇〇薬局を運営する株式会社〇〇の社長がご高齢で引退するまでに100店舗を何としても出店したい。また、近くに引退することになるのでゆくゆくは経営を任せられる人を探している。」

 

どの業界においても「幹部候補」だの「いずれは経営陣になれる」など、そういった釣り文句で求職者をその気にさせ、人材を確保しようとしているのはよくある手段。そんなつまらない手には私は乗らない。

そもそも私は薬局に電話があった時点で、今後、薬局で働く気はないことを伝えていたはず。にもかかわらず、相変わらず薬局を勧めてくるスカウトマン。(まあ、当時の私にはそれくらいしか能がなかったのかもしれないが。)

 

私「以前も電話で伝えましたが、私は・・・・・(一部省略)、薬剤師以外の仕事をしたいと考えている。なので今後、薬剤師として正社員で働くつもりはない。」そのような旨をスカウトマンに伝えると、

 

そういった〇〇先生みたいな薬剤師っぽくない人を探しているんですよ。」とスカウトマンは言う。

 

私はそう言われて少し嬉しかった。

もちろんスカウトマンがそんな私の心の内を突いてきているのはわかっている。スカウトマンが最初から考えてきた戦略の一つであろう。

 

とりあえず、このスカウトマンは一般的な薬剤師より話が立つのは間違いないが、こちらがちょろっとスカウトマンの心を揺さぶるとムキになって、過去の武勇伝や以前証券会社で働いていた時の年収などを披露してきた。

 

薬剤師とは全く異なる業界の話をしてくれるのは、非常に興味深いことなのだが、相手の自慢話を交渉に織り込まれても全く心が動かされないというか、なんだかレベルの低い稚拙な話をしていると感じてしまう。

このスカウトマンは対外交渉の経験は浅く、まだ駆け出しのレベルなのかもしれない。

 

一応、給料の交渉もしてみた

薬局業界で働くことをほとんど考えていなかったので、今回のお話は全く興味がそそられなかったのだが、それでもスカウトマンは〇〇薬局で薬剤師として働くことを勧めてくる。

 

特に、展開が変わらず、ゴールが見えなくなってしまったので、試しにどのくらい給料を検討してもらえるのかたずねてみた。

当時、私は都内の派遣薬剤師で、年収は750万円程度あった。それを越える年収800万円以上を提示してみたら、スカウトマンは一瞬だけ曇った顔をしてまた元の表情に戻った。(若造派遣のくせに意外と年収が高いと思ったのかもしれない。)

スカウトマン「店舗勤務の時は難しいかもしれませんが、いずれ役職がついてくれば、間違いなく可能だと思います。」

私の心の中「(おいおい、、、めっちゃ当たり前やん)」

言ってみて酷い話なのだが、私は年収800万円だろうが、1000万円だろうが薬剤師として働くつもりはなかった。(真面目に開業すれば、それくらいいくだろうから。)

実際にその後、広告代理店に転職し、その後漁師になっているただの変態が今の私である。

私が給与について聞いたあまり、歯切れの悪い感じになってしまったのだが、今回のスカウトのお話はお断りをして、スカウトマンと別れた。

 

結局、スカウトマンはなぜ私を知っていたのか

そういえば、話の途中でなぜ私を知っていたのか聞いてみた。

すると、まさかの答えが返ってきた。

スカウトマン「以前、〇〇様と一緒に働かれていた方に教えていただきました。

(!!?)

「誰ですか?」

スカウトマン「個人情報なので、教えることができないんです。」

(おいおい、私の個人情報はいいのかいっ)

こちらにも、スカウトマン側にも、話が良い方に進む見込みがなかったので、それ以上追求はしなかったものの、一緒に働いていた人が教えたってのは、全くの作り話だろう。なぜなら、私がその薬局で派遣薬剤師として働いていることは仲の良い友人にも家族にも教えていないのだから。知っているとしたら、薬剤師派遣会社か派遣先の薬局くらいだ。

また、スカウトマンが言うように、とあるスカウト会社のwebサイトのQ&Aには以下のように記載されている。

Q.どこから私のことを知ったのですか?

弊社では、年間約30万人の候補者情報を調査しています。
■調査方法例
・新聞(全国紙、業界紙)、ビジネス雑誌、専門誌等による、公開情報からの収集
・弊社とパートナー契約を結んでいる1,300名超の顧問からのご推薦
・現在もしくは過去の上司、部下、同僚、取引先、友人、知人等からのご紹介
上記リサーチの結果、実績が優れていると判断した方にご連絡をしています。

webサイトより抜粋、固有名詞のみ修正

確かに今回のスカウトマンが言っていたような調査方法や、その他にもそれらしい方法が列挙されていますが、

今回、スカウトマンが平凡すぎる私を知っていたのは、事前に薬局にかかってきたあの電話だろう。

 

もし、スカウトの電話が来たらどうする?

これまで長々と実際にスカウトと面会した話を述べてきたが、実は、スカウトと会ってからこの記事を書くまでにおよそ4年程度経過している。(なので所々記憶が曖昧です、すみません。)

その間に、スカウトマンからはなんの連絡もない。

私に魅力を全く感じなかったのか、薬剤師をする能力がないと判断したのか、もしくは私の薬剤師から引退する覚悟が強いと判断したのかはわからない。

ただ、もしスカウトの電話を受けて、この電話は詐欺なのか気になっている人もいるかもしれない。伝えておくと、この手のスカウトは詐欺ではないが、もはやヘッドハンティングでもなんでもない

ただ、それなりの確率で、饒舌で百戦錬磨のスカウトマンが出てくる可能性もあるので、相手のペースに乗せられないよう注意する必要がある。

自分に利益がない場合、スカウトを断ることのできる強い意志がある人なら会ってもいいかもしれない。

 

そして、薬剤師だった私は漁師になった

スカウトマンがスカウト活動する理由

なぜスカウトマンは他社から引き抜いて、別の会社に入れようとするのか?

フリーのスカウトマンというのもいるが、基本スカウトマンはどこかの会社に所属している。いわゆるサラリーマンだ。

スカウトマンの仕事はその名の通り、優秀な人材を外部からスカウトし、人材を欲しているクライアントに紹介する。すると、クライアントから高額なスカウトプロジェクトフィーを受けとることができる。

この成功報酬額は転職者の年収の5〜6割(例えば、年収500万円で転職が決まると、250万円が成功報酬としてクライアントよりスカウト会社に支払われる)とも言われるほどで、リクルートエージェントやDODAのような大手人材紹介会社のコンサルタントフィーと比較しておよそ2倍にもなっている。

 

多くの薬剤師は社会経験があってないようなもの。新卒時からも比較的年収ベースが高めな職業なので、軽く引っ掛けて、企業に売り飛ばすにはもってこいの職業だと思われているのかもしれない。

 

スカウト会社を利用するより

今回のような、スカウトの勧める薬局に就職したとしても、結局は、単なる一般勤務薬剤師で採用されて、ずっと勤務薬剤師になる可能性が高い。同様な口車にのせられて入社した薬剤師の中から一握りの人に、期待したような役職がつくかもしれないが、これは随分先の話で、保証なんてものは全くもって存在しない。

結局、期待していたものと違うと、不満が強くなり、悪い意味のジョブホッパーとなってしまう。

*ジョブホッパー:転職を繰り返す人

そもそもヘッドハンティングされる人というものは、引き抜かれるだけの能力や経験を積んでいることが条件であるので、

単に薬剤師の資格を持って、管理薬剤師の経験があって、というだけではヘッドハンティングされる対象にもならない。

転職サイトの中には、『スカウト型転職サイト』というものも存在するが、

転職者がこれまでの経験を転職サイト内に登録して、それを見た企業担当者が「うちで働いてみませんか〜」というメッセージを送るもの。

薬剤師免許を持っており、高年齢過ぎなければ、薬剤師経験が浅くても、ほぼ自動的にスカウトメール送られてくると言っても過言ではない。

ただ、スカウトメールを送るのにはそれなりの費用も発生するため、費用対効果の低いスカウトメールは最近では使われない。

話が戻るが、このようにスカウト会社の都合で、一部の薬局にフォーカスするより、ファルマスタッフなどに登録したり、薬剤師専門の転職コンサルタントに依頼したほうが、たくさんの求人から希望に合う会社を選ぶことができ、その他様々なサポートを受けることもできる。

給料の交渉もプロが代わりに行ってくれるので期待以上の条件で採用となる事が結構多い。

 

事実、私はアプロ・ドットコムファルマスタッフを利用して派遣薬剤師になり、その後、数年間薬剤師として勤務し、人材紹介会社の転職サイトDODA を利用して広告マンに転職。その後、沖縄に移住して漁師となった。(この記事で、一番突っ込みたくなるところはむしろここかもしれない。笑)