本業の薬剤師業務の他に副業を行なっている兼業薬剤師はどのくらいいるのでしょう。
2018年頃から政府の『働き方改革』が推進され、モデル就業規則に変更により、副業・兼業する労働者が増加しています。
しかし、管理薬剤師や公務員薬剤師に関しましては、本業とは別に許可なく副業・兼業することは法律違反により、処罰の対象となる可能性があることに注意したい。
この記事では、薬剤師に人気の副業・兼業をご紹介し、管理薬剤師や公務員薬剤師がしてはならない副業および違反してしまった時の罰則について、さらに会社にバレないで副業・兼業する方法について解説します。
Contents
時代は副業・兼業に前向きになっている
近年、政府が働き方改革の一環で副業を推進し、それを受けて副業・兼業を認める企業が増加しています。
政府の「働き方改革実行計画」では、副業を下記のように評価しています。
副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効。
参照:働き方改革実行計画(概要)
2018年1月には「モデル就業規則」を改定し、これまで「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」としていた規定を削除しました。そして新たに、副業・兼業に関する規定を新設しています。
第14章 副業・兼業(副業・兼業)
第67条1 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合参照:厚生労働省労働基準局監督課 「モデル就業規則」
未だ多くの企業は副業・兼業を認めていませんが、各企業は、モデル就業規則を見本に就業規則を作成しているため、就業規則の元になる文書が改定されたことは、副業を認める動きに大きく変わっていくと考えられます。
薬剤師に人気の10の副業・兼業
最近ではインターネットの普及により、薬剤師の副業・兼業に関する情報が多くなっており、それに伴って、兼業薬剤師の数は増加しています。
確かに、薬剤師は生涯学習を継続するという考えも大事です。しかし、本業を継続しつつ、他の何かに挑戦することで、自分の隠された才能に気づいたり、本業に役に立つ何かを見つけられるかもしれません。
実際、病院で正社員として勤務していた時に、派遣で調剤薬局を経験したことで、保険薬剤師が患者さんに対してどのように向き合っていたのかを知ることができたし、病院に対して何を求めていたのかを知ることができました。
そこで今回、薬剤師の間で実際に取り組まれている副業・兼業をいくつかご紹介したいと思います。
派遣薬剤師(主に単発)
薬剤師の副業・兼業でダントツに多いのが派遣薬剤師です。
同じ薬剤師という職業なので副業と言っていいのかわかりませんが、薬剤師経験のある人なら、気軽にできて、副業の中でも比較的割りの良い報酬を手にすることができます。
本業(病院薬剤師でも企業でもなんでも)の休日に、週1回ペースのレギュラー派遣や、月1回程度の単発派遣などいろんな働き方があるので、大きな出費がある時にちょうど良い。
なお、派遣薬剤師になるにはファルマスタッフやファルメイトのような派遣事業を行なっている会社に登録することで、仕事をすることができます。
ちなみに、派遣薬剤師の案件の大部分は調剤薬局での仕事で、都内でも時給は3,000円以上であることがほとんどです。地方の案件や、急募の案件(募集日の前日や当日)などは時給が高くなります。
薬剤師ライター
薬剤師のライターも副業として意外に多い。
ライターには製薬会社や広告代理店向けに学術的な記事を書くライターやインターネットメディアに投稿される記事を書くライターなど様々。
前者のライターはかなり専門的な知識を問われる職種で広告代理店や出版社に勤務して経験を積んだ後にフリーになることが多く、たくさんの書籍や取材などの労力を必要としますので、個人差もありますが、全体的に報酬は高いです。副業というより、むしろ本業として行う人が多いです。
どちらかと言いますと、副業・兼業としてのライターは後者の場合が多く、メディアの運営者から直接もしくはクラウドワーキングサービス(クラウドワークス、ランサーズ)などで間接的に記事の作成を依頼されます。
こちらは、労力の割に報酬は安いので、長く続かず辞めてしまう場合が多いのですが、文章を書くことが好きな人は挑戦してみても良いかもしれません。
また、医師・薬剤師が利用する医療情報サイトである『エムスリー』でも、比較的高めの報酬で記事作成の依頼がくることがあります。
最新の医療ニュースや医薬品情報をチェックするなら『m3.com(エムスリー)』。
m3.com は薬剤師力を維持するために必ず登録したいアプリケーション。
製薬会社からの広告収入により運営されており、製品紹介動画を見るだけで、商品券と交換できるm3 ポイントも貯まります。
まだ登録していない方は忘れずにチェック → 詳しくはこちら
薬剤師ブロガー
ライターとブロガーとの違いは辞書などで定義されたものではありませんが、ブロガーは個人でwebサイト(ホームページ)を作成して、掲載する記事を作成し、そのサイト内にgoogleアドセンスや企業の広告を挿入することで収入を得ます。
しかし、今日では、会社ぐるみでブログメディアを運営する様になっており、一方で個人ブロガーの書いた記事が検索エンジンの上位に来ることは大変難しく、ブログのみで生活する人は一握りです。副業・兼業としてお小遣い稼ぎにするならちょうど良いかもしれません。ただ、それでも難しい。
薬剤師で有名な副業・兼業ブロガーには、『薬ロマ』を運営するキクオ先生、『薬局のオモテとウラ』を運営する熊谷信先生などがおり、それぞれM3.com および日経DIオンラインに各先生の記事が掲載されています。
私個人としては、ペンギン薬剤師先生が運営する『薬剤師の脳みそ』をよく拝見させていただており、特に新薬が出た時など、学術的な面でお世話になってます。EPARKへも記事を提供されています。
ちなみに、私も当メディア内に少し学術的な記事を書かせていただいたのですが、全く読まれていないようです。
医療翻訳家
英語に自信がある人は副業・兼業として翻訳の仕事をすることも可能です。
医療翻訳家とは学術論文や抄録、研究報告書、学会資料などを日本語から英語にもしくは英語から日本語に翻訳する仕事です。
google翻訳やエキサイト翻訳などのネット翻訳機能が向上してきたものの、やはり完璧な翻訳とは言えないので、翻訳家は常に需要があります。
最近では『Webで翻訳 THE TRANSLATION WORKPLACE』(外部リンク)というクライアントと翻訳家を仲介するサービスも登場しています。非常にシンプルで使いやすいので、気軽に案件を獲得できるようになりました。
報酬価格は内容や納品期日などにより変動し、数千円程度から数万円と様々。
なお、以下の記事内でも医療翻訳家についてご紹介しています。
不動産投資
続いての副業は「不動産投資」です。
不動産投資といえば、普段勤務中にかかっている電話勧誘によってあまりいいイメージはないかもしれせんが、不動産投資自体が怪しい訳ではありません。
投資としても事業としてもハイリスクではなく、堅実で安定的な投資方法であるので、しっかり勉強し、信頼できる有識な人からのアドバイスなどが得られれば、参入を考えてもいいかもしれません。むしろ薬剤師は不動産投資に向いている職種です。
中でもマンション投資などは長期にわたって安定した賃料収入を生み、実物資産となるため、手堅い資産を形成できる。また、莫大な資金が必要と思われがちですが、投資用ローンを活用することで自己資金が少なくてもスタートできます。
また、不動産投資をすることにより、所得税や住民税を軽減できることがあります。
これは、不動産投資によって生じる、ローンの金利や建物設備の減価償却費や管理費などが必要経費として認められるため。その結果、「損益通算」により課税所得が下がり、所得税や住民税が軽減(節税)されるということです。
銀行は誰にでもお金を貸してくれるわけではなく、しっかり返してくれる人にしか貸してはくれません。公務員や士業といわれる弁護士や税理士等、大手一部上場企業に勤めている人、専門職である医師や薬剤師などの医療従事者です。このようなことからも、薬剤師が不動産投資に向いている職種といえます。
近年、不動産投資のセミナーがあらゆるところで開催されていますが、 多くの方が、相場より高く物件を購入されています。そのようなことが起こってしまっている理由は 、単に不動産業者と投資家とでは情報量が全然違うためです。
そうならないためにも、公平な目線で情報提供をする不動産鑑定士や投資に強い1級ファイナンシャルプランナーなどの専門家からのアドバイスに基づいて検討すべきといえます。
「資産形成・不動産投資に興味があるけど、自分で勉強する時間がない」「何に気をつけて物件を選ぶべきか知りたい」 「不動産投資について心置き無く相談できる相手が身近にいない」といったような薬剤師の方は、 セカオピ などのカウンセリングを受けることももできますので参考までに。
株・FX・仮想通貨(暗号通貨)投資
こちらは副業・兼業と言えないかもしれませんが、社会人として働き、ある程度余裕が出てくると、株やFX(外国為替証拠金取引)に興味を持つ人が一定数現れます。
最近ではスマホを含めたネット環境で売買することができるので、ネット口座を開設すれば誰でも簡単に取引を行うことができます。
もちろん、成功すれば億単位の資産を築くことも可能ですが、成功するのは一部のトレーダーで9割以上の個人は失敗するとまで言われています。
もし、参入するのであれば、生活費とは別に余剰資金で運用するようにし、株式投資の場合は景気が完全に後退して回復の兆しがある時に投資すれば素人でもリスクを少なく運用できます。
また、最近ではブロックチェーン技術を利用したビットコインに代表される「暗号通貨(仮想通貨)」と呼ばれるものも登場しています。
一時はこの暗号通貨の価格上昇によって「億り人」という成金が現れましたが、ハッキングにより数百億円盗まれる事件(通称:ネムショック)などが起こり、かなりハイリスクな投機とも言われています。
ちなみに薬剤師の中には仕事中にスマホで短期的に株などを売買するデイトレード(この場合投資ではなく投機と呼ばれる)をする人もいますが、これはあまりに危険です。患者対応中に大暴落することだってあり得ますので決して行わないようにしましょう。(空いている時間は医療情報のアップデートですね。)
FXは基本的に24時間取引することが可能です。現在、DMM.com では20,000円キャッシュバックキャンペーンも行っているので、これを機に小額の資金でトライしてみるのも良いかもしれません。
作家・イラストレーター
趣味を副業にできるものとして「作家」などがあります。作家といっても様々。
絵やイラストを描くのが得意な薬剤師はイラストレーターとして活躍できます。クライアントは広告代理店や制作会社、メディア運営者など法人から個人事業主まで様々。
もし、本格的にイラストレーターとして活動した経験がなくても、最近ではココナラ や クラウドワークスなどのクライアントと作家をつなぐサービスも多くあるので、気軽に参入しやすい副業と言えます。薬剤師は医療に精通しているということで、医療関係のイラストなどを描ける人は重宝されるかもしれません。
ちなみに、美少女戦士セーラームーンの作者として有名な漫画家竹内直子さんは元々病院で勤務する薬剤師でした。
また、アクセサリーを自主制作し、販売して利益を得ている兼業薬剤師もいます。
最初は自身で身に付けたいものを作成していましたが、メルカリやラクマといったフリマアプリで販売したら意外と売れて副業となったようです。
最近では、minne や creema といったハンドメイド作品に特化したアプリケーションも登場しているほど、ハンドメイド作品の需要が高まっています。
固定のファンなどが増えたら、自身のwebショップを構えたり、twitterやinstagram などのSNSを利用して販促を行えば、より大きな利益を得ることができるかもしれません。
美容師専門学校の講師
美容師専門学校の授業に薬剤師を必要としているってご存知でしたでしょうか。
必ずしも薬剤師である必要はないのですが、薬剤師であれば特に条件なく講師となることができるので、募集元の専門学校側も薬剤師を積極的に募集しています(医師や歯科医でもなれるのですが、人件費的に適していません)。
ただ、募集枠が非常に狭いので、募集案件はほとんどないのが現状です。
担当教科は美容師国家試験の筆記科目である「衛生管理」「美容保健」「美容の物理・化学」です。
物理というと、なんともハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、薬剤師であれば全く問題ない程度のレベルです。むしろ、少しくらい苦手に感じるくらいの方が、勉強が苦手な学生の気持ちになって教えることができるでしょう。
引用:j-head
非常勤の講師として募集する場合がほとんどなのですが、上記のように稀に正社員の募集もあります。
コマ数の関係で、正社員の給与は比較的やすく、時給単位で募集される非常勤の場合は派遣薬剤師と同様な給与額となることが多いです。何かを教えることが好きな薬剤師の方は兼業として一度検討してみてもいいかもしれません。
YouTuber
最後にあげる副業・兼業ならやはりYouTuberでしょう。
トップユーチューバーのように大金を稼ぐとまでは言いませんが、顔出しOKな人は副業として小遣い稼ぎ程度にチャレンジしてもいいかも。もしくは別のビジネスのための集客ツールとして利用できるかもしれません。
医療業界で有名なYouTuberには医師であり芸人でもあるしゅんしゅんクリニックPが活躍していますが、薬剤師でYouTuberとして活動している人はどのくらいいるのでしょうか。
- シャーベットクロックさん
- 大賀よかっちゃんねるさん
- 健康バラエティ【はくいさん&マイちゃんねる】さん
- 薬剤師パンダ先生さん
- Ph.ソラトモさん など
検索上位に来ない薬剤師YouTuberも入れるとかなり多くの薬剤師が参入しているようです。
特に、ドラムとピアノができるYouTuberでおなじみのシャーベットクロックさんは2019年10月の時点で2万人以上の登録者数がいらっしゃいます。軽快なトークとテンポの良い音楽がかっこいい。動画自体も非常にクオリティの高いものなのですが、自身で編集されているのでしょうか。
意外と多くの薬剤師YouTuberが存在したので、特集を組んでご紹介したいと思います。
薬剤師の副業・兼業の禁止項目と罰則に関して
これまで、薬剤師に人気の副業についてご紹介してきましたが、その中で管理薬剤師は仕事内容によっては行うことが禁じられているものがあります。以降では管理薬剤師が行うことのできない仕事と違反した場合の罰則について解説します。
管理薬剤師は一部を除き副業・兼業が禁止されている
基本的に管理薬剤師は、医薬品医療機器等法(薬機法)により兼業・副業が禁止されています。
(薬機法第七条)
1 薬局開設者が薬剤師であるときは、自らその薬局を実地に管理しなければならない。ただし、その薬局において薬事に関する実務に従事する他の薬剤師のうちから薬局の管理者を指定してその薬局を実地に管理させるときは、この限りでない。
2 薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師のうちから薬局の管理者を指定してその薬局を実地に管理させなければならない。
3 薬局の管理者は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。(薬機法第二十八条)
1 店舗販売業者は、その店舗を、自ら実地に管理し、又はその指定する者に実地に管理させなければならない。
2 前項の規定により店舗を実地に管理する者(以下「店舗管理者」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、薬剤師又は登録販売者でなければならない。
3 店舗管理者は、その店舗以外の場所で業として店舗の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない。ただし、その店舗の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
管理薬剤師として勤務している場合、他の薬局で勤務したり、その他薬事に関する実務をすることはできません。
とりあえず、この2つさえ押さえていれば問題ないでしょう。
ただし、薬機法にも記載されているように、都道府県知事の許可を受けた場合には、薬局の管理の他に薬事に関する実務を行うことができます。
例えば、学校薬剤師や薬剤師会による事業などの都道府県知事からの許可が出るような公益性の高い仕事であれば副業・兼業が可能となります。
その他には、上でも紹介した「ライター」「翻訳」「データ入力」「アンケート」などは管理薬剤師であっても副業・兼業とすることは可能です。ただし、薬事に関連しないことが条件であり、案件が薬事関連であるか判断ができないような場合は、手をつけない方が良いでしょう。
公務員薬剤師はもちろん副業・兼業は禁止
当然ながら役所や国立病院で勤務するような公務員の薬剤師も副業・兼業は禁止されています。
これは国家公務員法では103条と104条に定められているため、公務員を辞めなければ、副業をする事が出来ません。
私企業からの隔離(国家公務員法第103条)
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法第104条)
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条)
職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
秘密を守る義務(国家公務員法第100条)2〜5項は省略
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
職務に専念する義務(国家公務員法第101条)2項は省略
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
ただし、先ほどもご紹介しましたが、株やFXの投資、不動産投資、投資信託などは公務員薬剤師でも問題なく行うことができます。そもそも副業というくくりにならないのかもしれません。
法律違反した場合の罰則について
副業・兼業が会社等にばれてしまった場合、どのような罰則があるのでしょうか。
これらは一般薬剤師、管理薬剤師、公務員薬剤師でそれぞれ処遇が異なりますので、法律を違反した時の罰則を次の3つに分けて解説します。
- 一般薬剤師
- 管理薬剤師
- 公務員薬剤師
一般薬剤師の場合
会社の就業規則において副業を禁止している場合は、就業規則違反となり、就業規則が定めている懲戒処分の対象となります。
懲戒処分の種類は7つあり、罪の重さは下記の通りとなっています。
軽い
|戒告
|譴責(けんせき)
|減給
|出勤停止
|降格
|諭旨(ゆし)解雇
↓懲戒解雇
重い
なお、懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則にその種類・程度を記載し、該当する就業規則に定めた手続きを経る必要があります(労働基準法第89条)。また、就業規則は労働者に周知させておくことが必須です(労働基準法第106条)。
ちなみに、減給の制裁については、労働基準法第91条にて規定されていますが、その他どのような種類の処分が可能かについては法律で定められていません。
あまり、副業による罰則が重くなることは考えられませんが、副業が本業との競合関係になる場合や本業の信用を失墜させる可能性がある場合などに関しましては、その企業の過去や将来に大きな影響を与えることも考えられるので、懲戒処分が重くなると予想されます。
管理薬剤師の場合
管理薬剤師の場合は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と薬剤師法が関係しているため、以下の罰則が科せられる可能性があります。
まず、先ほど記載しました薬機法(第7条と第28条)について検討します。
薬機法 第八十六条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第七条第一項若しくは第二項、第二十八条第一項若しくは第二項、第三十一条の二又は第三十五条第一項若しくは第二項の規定に違反した者
上の薬機法第86条によると、薬機法第7条および第28条の1項と2項のみ言及されており、副業に関して記されている第3項に関しては言及されていません。
すなわち、薬機法上では管理薬剤師が副業・兼業したことに対する罰則は存在しないと解釈できます。
続いて薬剤師法ですが、第8条の第2項において以下のように定められています。
薬剤師法 第八条 2
薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあったときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の業務の停止
三 免許の取消し
「薬剤師の品位を損するような行為のあったとき」とありますが、私の考えでは、かなり重大な薬剤師の品位が欠落をした場合に限り処分の対象となると思います。
しかし、解釈する人によっては、
薬剤師倫理規定において、薬剤師には「薬剤師法」「薬機法」等の関係法令を守ることが義務とされているから、薬機法(第7条および第28条の3項)に違反する形での副業は、薬剤師法に定める「薬剤師としての品位を損するような行為」に該当すると考えることもあるようです。
その場合は、戒告、三年以内の業務の停止、免許の取消しの対象となる可能性がありえます。
そうはいっても、副業が重大な医療ミスにつながっていなければ「三年以内の業務の停止」「免許の取消し」なんてことはあり得ないとは思いますが。
公務員薬剤師の場合
人事院の「懲戒処分の指針について」によると、副業・兼業の許可を得る手続きをせずに、副業がばれた場合の処分としては、減給又は戒告と定められています。
そのため、許可を得れば行える副業を無許可で行っていることがバレたときの懲戒処分は、重くても減給です。
しかし、実際にはやり方が悪質であったり、副業で得た利益を税務署に申告していなかったりと、公務員の信用を失墜させたという理由により「停職」や「免職」になった事例もいくつか存在しますので、公務員薬剤師の場合は注意しなければなりません。
- 免職:職員の身分を剥奪し、公務員関係から排除するもの
- 停職:1日以上1年以下の期間、職員としての身分を保有させたまま職務に従事させないもの(その間の給与は不支給)
- 減給:1年以下の期間、基本給の月額の5分の1以下に相当する額を給与から減額するもの
- 戒告:その責任を確認し、及びその将来を戒めるもの
秘密で副業・兼業をしているが、会社にバレるのか?
モデル就業規則が改定されたことで副業を認める企業が増えてきましたが、まだ副業を認めていない企業も数多くあります。
そのような企業に在籍しながら、副業をする場合には是非気をつけて欲しいことがあるのでこちらで解説します。
副業・兼業は「住民税」でバレる
基本的に副業は住民税を見れば「この従業員副業しているな」と判断することができます。
一体、どういうことでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、住民税というのは、その住人が住所を持つ地方自治体に納付する税金で、その納付金額は「前年度の年収」を基準に決定されます。
仮に、通常勤務している会社の前年度の給与が600万円だったとすると、翌年納付すべき住民税はこの「600万円」を基準に決定されます。
しかし、副業として前年100万円の収入があった場合、前年度の年収は合計700万円となります。600万円の年収より700万円の年収の方が住民税は多くなりますので、住民税が多く引かれている従業員はおかしいわけです。
何より、役所から会社宛てに「住民税の決定・変更通知書」というものが送付されるのですが、副業して確定申告している場合には「その他の所得計」という項目に副業で得た収入(所得)額が記載され、「主たる給与以外の合算所得区分」にチェックがついています。
「じゃあ、確定申告なんてしなければ前年度の年収は600万円のままでバレないではないか」と思うかもしれませんが、この場合は税務署側が放って置かないですし(普通にバレます)、「脱税」というさらに重い違反となりますので、絶対に確定申告を行い払うべき税金は納めましょう。
では、就業規則で縛られている薬剤師は副業できないのかと言いますと、心配は要りません。実は合法的に副業がバレない方法もあります。
住民税で副業がバレないための方法
通常、住民税は勤めている会社のお給料から毎月天引きされています。ほとんどの人がこの方式だと思いますが、これを特別徴収と言います。(なんで特別なのでしょうね笑)
先ほど申し上げましたが、この特別徴収ですと、役所から会社に「住民税の決定・変更通知書」が送付されて副業がバレてしまいます。
しかし、これを「普通徴収」に変更すると、役所から会社に「住民税の決定・変更通知書」が送付され無くなります。その代わり、毎月給与から住民税が天引きされず、自分で役所へ行き納税することになります。
普通徴収に変更する方法(副業収入20万円を超える場合)
通常の「特別徴収」を「普通徴収」に変更するには自ら確定申告をする必要があります。
確定申告の提出書類の中に、「確定申告書の第二表」がありますが、その項目の中に、以下のの2種類選択する項目があります。
- 給与から天引き(特別徴収)
- 自分で納付(普通徴収)
この2つのうち「自分で納付」(普通徴収)を選択すれば、会社宛てに「住民税の決定・変更通知書」は送付されず、副業はバレなくなります。
確定申告というと、なんとも小難しそうなイメージがありますが、最近では確定申告はネットで最後まで済ませることができるようになり、非常に簡単になりました。ただ、慣れないうちは税務署で教えてもらい作成するか、ネットで作成し印刷したものを税務署に持ち込みチェックしてもらうと良いでしょう。
普通徴収に変更する方法(副業収入20万円以下の場合)
副業の収入が20万円以下の場合は、所得税を納める義務はなくなりますので、確定申告をする必要はなくなります。
しかし、住民税を納める義務は継続(しないと脱税ですよ!)しますので、確定申告の代わりに「市民税・府(県)民税申告書」における「住民税の支払いに関わる項目」で普通徴収を選択すれば、会社宛てに「住民税の決定・変更通知書」は送付されず、副業はバレなくなります。
ちなみに、確定申告をすれば、住民税の申告は自動で行われますので、副業の収入が20万円以下でも確定申告を選択することもできます。
マイナンバーで副業がバレる?
ちなみに、以前「マイナンバー制度」で副業がバレるという声もありましたが、マイナンバーで副業がバレるということはありません。
マイナンバーを利用しているのは「税務署」です。会社がマイナンバーを利用して納付している税金を把握するのは不可能です。
最後に 〜薬剤師をすることは義務ではない〜
薬剤師になって何年か働くと、いつの間にかルーティンワークのように仕事をこなしている自分がいます。
もっと何かできるのに、特に何もない。もっとお金が欲しいのに、どうすればいいのかわからない。
今回の記事では副業を10個程度ご紹介しましたが、その他にも副業・兼業に取り組む薬剤師はたくさんいます。
特に派遣薬剤師をする人には変わった人が本当に多い。
雑貨屋を開こうと自己資金を貯めるために派遣薬剤師をする人、花屋でバイトする人、ゲストハウスを運営する人などいろいろ。
たこ焼き屋併設の薬局を開きたいという人もいますし、バーテンをやっている開業医などもいます。
果たして、これらの薬剤師は本当に変わっているのでしょうか。
自分の可能性を信じて、何かに挑戦してみるのも、何か新しい発見があるかもしれません。
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>>フリーランサーの薬剤師の記事についても書いてます。
現在、薬剤師の派遣を行なっている紹介会社は限られており、その中でも単発派遣を行う会社は一部です。
薬剤師派遣を行う企業・・・ファルマスタッフ、薬キャリ など
単発派遣も行う企業・・・ファル・メイト、アプロ・ドットコム など